学生のための投資リスク入門:怖がらずに知っておこう
学生のための投資リスク入門:怖がらずに知っておこう
将来のために「お金を増やす」ことに関心を持っても、いざ「投資」という言葉を聞くと、「なんだか難しそう」「損をするのが怖い」と感じる方は少なくないでしょう。特に「リスク」という言葉を聞くと、危険なもの、避けるべきものだというイメージを持つかもしれません。
しかし、将来を見据えた資産形成において、投資は一つの重要な選択肢となり得ます。そして、投資を始める上で「リスク」について正しく理解し、どう向き合うかを知っておくことは非常に大切です。リスクは、むやみに怖がるものではなく、「知って備える」ことでコントロールできる側面があります。
この記事では、投資初心者である学生の皆さんが、投資におけるリスクについて基本から理解し、将来のための投資とどう向き合っていくかを考えるヒントを提供します。
投資における「リスク」とは?それは「危険」ではない?
私たちが日常生活で「リスク」という言葉を使うとき、「危険」や「悪いこと」といったネガティブなイメージが強いかもしれません。しかし、投資の世界で言う「リスク」は、少し意味合いが異なります。
投資におけるリスクとは、「将来の成果が不確実であること」、つまり、「予想していた結果と、実際の成果が異なる可能性」のことを指します。期待していたよりも収益が上がらないかもしれないし、場合によっては元本(投資したお金)を下回ってしまう可能性も含まれます。
例えば、アルバイトのシフトをたくさん入れたのに、急な体調不良でほとんど働けなかった場合、これも「期待した収入」に対して「実際の結果」が異なる「不確実性」と言えるかもしれません。投資のリスクもこれと同じように、「良い方向にも悪い方向にも結果がぶれる可能性」のことなのです。
一般的に、高い収益(リターン)を期待できる投資ほど、この「結果がぶれる可能性(リスク)」も大きくなる傾向があります。これを「リターンとリスクは表裏一体」と表現することがあります。
投資にまつわる主なリスクの種類
投資にはいくつか種類のリスクがありますが、学生の皆さんがまず知っておくと良い代表的なものをご紹介します。
価格変動リスク
これが最も身近でイメージしやすいかもしれません。株式や投資信託などの価格は、世の中の経済状況や企業の業績、社会情勢など、様々な要因によって常に変動しています。
例えば、ある会社の株を1000円で買ったとします。その会社の業績が良ければ株価は1200円に上がるかもしれませんが、業績が悪化したり、世界経済が悪くなったりすれば800円に下がる可能性もあります。このように、投資した資産の価格が変動する可能性を「価格変動リスク」と言います。
金利変動リスク
市場の金利が変動することによって、債券の価格や、投資信託が保有している債券の価値が影響を受けるリスクです。金利が上昇すると、一般的にすでに発行されている債券の価値は下がります。
為替変動リスク
海外の株式や投資信託、外貨建ての預金などに投資する場合に関わるリスクです。例えば、1ドル=100円の時に100ドル(1万円)を投資したとします。投資先の価値が100ドルのままでも、円高が進んで1ドル=90円になると、日本円に戻した時には9000円になってしまい、元本割れしてしまいます。このように、為替レートの変動によって資産の価値が変わる可能性を「為替変動リスク」と言います。
信用リスク
これは、投資した会社や国が財政難に陥ったり、倒産したりして、約束通りに利息や元本を返済できなくなる可能性を指します。株式の場合は、会社が倒産すれば株の価値はほぼゼロになる可能性があります。
これらのリスクは、投資する商品によって関わってくるものが異なります。すべてのリスクを完全に避けることは難しいですが、どのようなリスクがあるのかを知っておくことが、冷静な判断のために重要です。
リスクとどう向き合うか?学生でもできる基本的な考え方
では、これらのリスクとどのように向き合っていけば良いのでしょうか。学生の皆さんが投資を始めるにあたって、ぜひ押さえておきたい基本的な考え方をご紹介します。
1. 分散投資を心がける(「卵は一つのカゴに盛るな」)
これは投資の基本的な考え方です。「一つのものだけに集中して投資すると、それがダメになった時の損失が大きい。いくつかのものに分けて投資しておけば、どれか一つが悪くなっても他のものでカバーできる可能性がある」という意味です。
具体的には、
- 異なる種類の資産に分散する: 株式だけでなく、債券、不動産(直接は難しくても関連する投資信託など)、REIT(不動産投資信託)などに分けて投資することを検討します。
- 異なる地域に分散する: 日本国内だけでなく、アメリカやヨーロッパ、新興国など、世界の様々な国や地域の資産に分散して投資します。
- 異なる業種・企業に分散する: 一つの業界や会社だけでなく、様々な業界の複数の会社に投資します。
例えば、日本のIT企業の株だけを持つのではなく、日本の食品会社の株や、アメリカの会社の株、あるいは様々な国の株式や債券をまとめて持っている投資信託などに分けて投資することで、リスクを抑えることができます。
2. 長期投資を意識する
投資は短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、長い目で取り組むことが重要です。短期間では価格が大きく変動することがあっても、経済は長期的には成長していく傾向があり、それに伴って投資資産の価値も上昇していく可能性があります。
例えば、毎月コツコツと一定額を積み立てていく「積立投資」は、価格が高い時には少なく買い、価格が低い時には多く買うことになるため、平均購入単価を抑える効果が期待でき、長期的な資産形成に向いています。これは「ドルコスト平均法」と呼ばれる方法です。
短期的な価格変動リスクを、長期で時間をかけることで和らげる効果が期待できます。
3. 無理のない金額で始める
学生の本分は学業であり、収入源も限られている場合が多いでしょう。投資はあくまで「将来のための自己投資」の一部として、まずは生活費や近い将来使う予定のあるお金とは別に、なくなっても当面困らないくらいの少額から始めることが非常に大切です。
例えば、毎月数千円から始められる投資サービスもあります。無理のない金額で始めることで、価格が下がった時にも精神的な負担が少なく、焦らず冷静に投資を続けることができます。
4. 情報収集をしっかり行う
投資を始める前には、どのような商品に投資するのか、どのようなリスクがあるのかをしっかりと調べることが重要です。分からないことはそのままにせず、信頼できる情報源(金融機関の公式サイト、公的な機関が提供する情報など)から学ぶ姿勢を持ちましょう。
ただし、インターネット上には不確かな情報や、「絶対に儲かる」といった甘い誘い文句も多く存在します。そういった情報に惑わされず、常に冷静な判断を心がけてください。
まとめ:リスクを知ることは、将来のための投資を続ける力になる
投資における「リスク」は、「危険」そのものではなく、あくまで「結果の不確実性」です。この不確実性を正しく理解し、「分散」「長期」「無理のない金額」といった基本的な考え方で向き合うことができれば、むやみに怖がる必要はありません。
リスクを知ることは、投資の世界で冷静に判断し、長く続けていくための大切な力になります。まずは、少額から始めてみたり、投資に関する情報収集を続けてみたりするなど、できることから一歩踏み出してみましょう。将来の自分の選択肢を広げるための、大切な「自己投資」となるはずです。